ゴールドマンサックスの訴追から徒然に

4/16アメリカSECが、ゴールドマンサックスのCDO(債務担保証券)取り扱いについて、証券詐欺罪で訴追を発表した。
その結果、NYダウは150ドルの下げ、石油、金など先物も急落した。
訴追内容は、ポールナンアンドカンパニーという大手ヘッジファンドが、1500万ドルの手数料を支払って、このCDOを作ってもらう一方で、その価格下落を見込んだCDS契約を結んでいた、という内容だ。
2008年9月に始まった本格的なデリバティブの崩壊は、その膿出しは全く終わってはおらず、国際ジャブジャブ発行によるにインフレ誘導が世界的になされており、いたるところで組み込まれたCDS、CDOが存在している。
考えてもみよう。リーマンの時、CDSが対象だったが、売り買いの両サイドが調整をして8%の損失で済んでいて、あれだけの激震だった。しかし、CDOを中心として、どこにどう入り込んでいるのか、把握することが不可能であること、その膿出しの第一弾が行われたと見るべきだろう。

今後、このデリバティブの中核商品であったCDS、CDOに関連した事件が多発するだろう。CDSについて、ウォーレン・バフェットが金融界で時限核爆弾が発明されてしまった、とコメントした。CDOについても同じである。
世界はこのデリバティブバブルの清算をつけなければならない。
猶予は3年。2012年末までだろう。
一気に問題が出れば大恐慌。輸出依存比率が47%の中国経済も一時的に墜落する。(日本は17%)
徐々に膿出しが可能ならばいいのだが。
いずれにしても通貨の信用度合いが低下し、実物経済とその派生商品に移行する流れは止められないだろう。

石油や金は、アンチドル(vsドル)の動きを取るため、この通貨そのものに対する信用不安が高まれば高まるほど上がる。
金が良い例で、昨年12月初旬に$1200ドル当たりを付けたままは下がらない。危機に伴って金は5000年の歴史を背景にあがってくる。

本来、アメリカの立場でいくと、ドル安の方が、アメリカの輸出産業に対して都合が良い、そして何よりも石油をドルで取引するという世界の前提からすると(2007年春イランは日本に石油の円決済を求めたが)、ドル安の方が都合がよかった。
2010年4月現在その反対にドルはあがっており、ドルインデックスで80当たりにあると思う。これは、ユーロのギリシャ問題が起因している。

円は安い。1ドル63円から73円の円高説があるが、こんなレートでは日本経済が崩壊する。1995年の79円の際はストックがまだあったが今は無い。今年春の円安誘導は、日銀の為替オペレーションが成功している。84円を付けた急激な円高の後、88円の分岐点で、見事円安誘導に成功した。

いずれにしても、この3年が勝負なのである。

一定平和に見える世の中の深いレイヤーで起こっている事態。
日本人は本質的に明るいので、どうしてもこのような事情に疎くなる。(欧米は基本が陰気=だから明るいものを好むという岡潔説)

日本が世界の中で持っている使命のようなものがあると思う。
それは資金援助だけではないだろう。

日本は本当凄いんだ、という思い込みは、1980年代の幻想であり、1990年以降資本主義のシステムを取り込んだロシア、中国、インドが出現することで、資本主義人口は10億人から40億人まで膨らんだ。この40億人のグローバルマーケットの中で付加価値の高い日本製品は、アジアマーケットの価格水準の中では、高すぎるのが現状である。欧米が購買力のあるうちは良かったが、世界全体の中でポジションニングが見えないのが本当のところだ。

しかしながら、それでも日本は、ここは凄いと言いたい訳である。
先日書いたように、岡潔さんの言葉で、政治、経済よりも前に文化がある。言い換えれば、企業にも文化がある。

面白い話を紹介しよう。
駐日アメリカ大使は、ライシャワーから始まり、マンスフィールド、モンデール、ベイカーなどアメリカの大御所が大使として赴任してきた。
本来アメリカの意見を代行するのが大使の役割なのだが、赴任期間が長期に渡るにつれ、次第次第に日本のファンとなり、発言に日本よりのバイアスがかかってくる。
モンデールは、東京の根津にある「たい焼き」のファンになりお忍びで買いに行っていたが、アメリカ本国に戻った途端、選挙でも落ち、アメリカの基準に合わなくなってしまう(ちょっと残念)。そんな理由で、先代のシーファーから現在のルース大使は、大統領選での資金貢献で選ばれている。

日本の持つ文化力。

私たちは、もっともっと、この力に自信を持ったほうがいい。