現在の金融危機について榊原英資さんの話

以下は2008.11/8の投稿。
現在の金融危機について榊原英資さんの話をセミナーで聞く機会があり
非常に整理されているため、書くことにした。

現在の金融不安は100年に一度か二度のものであるということ。これは元FRB理事長のグリーンスパンが語った状況分析である。
まず、1カ月前非常にやばかった、と。
特に銀行間取引、これはインターバンクといわれる市場であるが、銀行間同士で疑心暗鬼に陥り動かなくなってしまった。

私見だが、2007年8月16日にも同じ状況があった。このときはFRBが金利を下げること、そして日銀が金利を上げないという声明を翌日に出したことで切り抜けた。

現在、世界各国の中央銀行はドルを大量提供し、日銀も無制限に提供している。しかしながらCDマーケット、コマーシャルペーパーが動いていないということだ。
社債市場も機能していない。社債から銀行へ戻ってきている。金融市場が大きく崩壊のプロセスにある。

1990年代の半ばから、金融取引が膨らんだ。イギリスのビッグバン、アメリカにおいては銀行は州を超えて業務ができるように規制を突破だった。そして金融工学で生まれた様々な商品が開発され膨らんでいった。
その一つに証券化がある。銀行のバランスシートにのっかっているものを売った。また住宅ローンも証券化されマーケットで売られ、規制がない限り資金調達ができる仕組みとして膨らんでいった。他の債権と組み合わせて証券化されその組み合わせは多岐にわたったようだ。

銀行はコマーシャルバンクとインベストメントバンクの2種類があり、コマーシャルバンクでは無限に資産はできず8%の自己資本比率を守ることで資本の12倍くらいまでの資産を保有することになる。
ところがインベストメントバンクについては資本の規制がなく90年代から株式に投資をし、自分たちでリスクをとる限り莫大な利益を上げるという繰り返し行ってきた。このインベストメントバンクから付き合うとした人たちがヘッジファンドを立ち上げた。
ヘッジファンドは今、全体で1兆7000億ドルの運用資金がある。この運用資金をドルで引き上げているのが今の為替にも影響している。以前書いたが、ドルフランが上がり、ユーロドルが下がるというこの現象は世界的なインベストメントバンクならびにヘッジファンドの資金引き揚げが理由である。
さて90年代から2006年まで世界的にイクイディティが潤沢になったためかなりリスクの高い人にお金を貸していった。
日本では、倒産したリーマンブラザーズがホリエモンに日本テレビの買収で700~800億を貸すといったことは有名だ。それだけ巨大なリスクで巨大な利益を上げていた。
アメリカのロバート・ルービンはゴールドマンサックスの元CEOであり、今のオールソンも然り。インベストメントバンクが政策まで反映している。

さてアメリカのサブプライムローンは、返せない人に貸したわけだが、あがっていたらOKだった。しかし2006年からアメリカの住宅価格は下がり出す。
今回は今までと違うのは、このバブルが異常に大きい。
アメリカのインベストバンクのうち、ベアスターンズ、リーマン、メリルリンチは倒産し、ゴールドマンサックスモルガンスタンレーはコマーシャルバンクに戻ろうとしている。つまりインベストメントバンクのモデルが崩壊している。インベストメントバンクは資本の20~30倍のレバレッジをきかせて利益を上げていたわけだ。
ヘッジファンドの全体の資産はこの数ヶ月で10兆円減ったといわれる。これは全体の5-7%。
ジョージソロスはヘッジファンドの資産はさらに25-50%減るだろうと予測しているらしい。多くのヘッジファンドがこれから解散するだろうし、大型のヘッジファンドも消えていくことになるだろう。
資金がどれだけマーケットから引き上げられていくか。
商業銀行は貸し出しが難しくなり、貸し渋りが出てくる。資金調達も難しくなる。オバマの選挙戦でアメリカのGM、フォードの救済も論点だった。
日本にいると世界の状況が分かりづらいが、アメリカの経済状況はかなり悪く、もちろん日本よりも、ヨーロッパはさらに悪い。EUは、4-6月マイナス成長で7-9月もマイナス成長のため、2四半期でマイナスが続くとリセッションであるという定義から、この数ヶ月で、落ちている。
世界同時不況はさらに続くだろうと予測。そして円高終わっていない。
ざっとこういう話だった。

金融の歴史と状況を整理し理解するうえで役に立った。

榊原さんは国連の国際金融システムの改革を検討する専門家委員会のメンバーに指名されている。アメリカからはスティグリッツがトップとして就任している。スティグリッツは英米主導の国際金融システムに対して、異議と改革を申し立てたことで知られている。ノーベル経済学賞を受賞したのは確か今年だったか。

榊原さんは、1990年代後半、アジアの通貨危機が全世界的に金融不安へと拡がったとき、アジアの通貨基金構想を立てようとした。結果的には、アメリカにつぶされたが、(キッシンジャーは異議をとなえたことなど、本で紹介されている。)、英米主導の金融システムに対して、アジアの金融システムを作ろうとして意義は高い。

少し話は昔に戻る。1990年代の後半に、韓国にIMFが入ったわけだが、このときのIMFの金利は、10%に近かったはず。高すぎる。当時韓国は造船など多額の投資をしており行き詰まった。香港では、事前に韓国の動きに対して警告をする意見もあったと聞く。本質的に、当時の韓国は日本への嫉妬で追い越せ追い抜けで失敗した。そしてIMFへの依存という流れ。

本来、アジアは、日本、中国、韓国がまとまれば素晴らしい地域になる。そしてインドも入ってくることができるだろうし、中東もアジアなのである。

今年の夏あたり、日経のWEBサイトで日本と中国のアンケートが掲載された。日本人で中国が好きという比率は16%、逆に中国人で日本が好きという比率は65%だった。この数字には驚いた。江沢民が国内の権力をまとめるために抗日を使ったことは有名だが、今は違う。清水美和さんの書籍に詳しく歴史と状況が書かれている。

中国は先週日本円にして45兆円の景気対策を発表した。しかしながらアメリカのクリスマス商戦が振るわないため輸出が落ちている。

すべては大きな過渡期を迎えている。

この過渡期の中でこそ、発見があり、未来への展望が生まれるはずだ。