ハイブリッドで行こう

新宿で友達と飲んでいた際、カーテンに仕切られた隣のテーブル席から20代の男女6人ほどが賑やかな話し声で性を話題にしていた。かなり大きな声で隣のテーブルの私たちにも聞こえてくる。
31歳の彼と25歳の彼と付き合っていて、31歳のほうのアレは試験管みたいで、と凄い話で盛り上がっている。見た目は普通におしゃれをした女の子たちである。書くのが憚れる内容が女の子たちの口から勢いよく飛び出し、快感話の洪水が向こうのテーブルを渦巻いている。友達と顔を見合わせ、しばらく聞いていた。性を対象化して物質化しているのは明らかだが、今回、道徳的な判断は無しとして、考えてみた。

エネルギーのポテンシャルが驚くほど高い。聞こえてきた言葉のひとつに「本能」という言葉があった。止むにやまれず突き動かされている前駆のエネルギーがある。普段、親や大人たちとの間で見せている彼女たちの顔の背後には、この突撃するような快感一直線の本能が渦巻いている。本能は彼女たちのエネルギーを肯定し、即座に状況を取捨選択する直感の強さも持っている。
性であれ、スポーツであれ、その対象の中で突破してくる前駆の優位性は、女の子たちがある意味、突然変異して目覚めたかのようで生き物としてのサバイバルを始めているようだ。大人たちはそのことを理解できないでいるだろう。

世代的にはロスジェネにあたる彼女たちは、男の子たちが、社会と自分との関係、上司と自分との関係などの諦念が、やっぱりダメかなあという閉じた円環的時間意識の中で人生を定義して勢いを無くしていくのに対して、空間的突破力ともでも言うべき凄みがある。

時間意識に対する空間意識。思考に対しての直感。

店を出た後、友達とこのエネルギーが日本をサポートするかもしれない、という話をする。結婚に幻想を見なければの話だが。

ふとハイブリッドで行こうというメッセージが生まれる。
体から受ける信号は男もハイブリッドになっており、この体を情報センターとして復権させると、蘇ってくるものがある。

「悪魔のサイクルへ挑む」より

まだまだ残暑が厳しい。今年、アメリカは50年ぶりの大干ばつで小麦、トウモロコシ、大豆が凶作。
穀物が値上がりしている。4年半ぶりの高値を付け、異常気象が及ぼす影響が生活の隅々にまで波及している。
西澤潤一さん、Isao Ueno共著の「悪魔のサイクルへ挑む」を読む。西澤博士は、Mr半導体として知られ、一時期ノーベル賞に一番近い日本人として知られている。
地球温暖化で海流の流れすら変わり、CO2の25倍もの温暖化作用をもつメタンハイドレードが海底から吹き出した場合のシミュレーションが書かれている。
このまま人類が手を打てない場合、80年後に地球上に人類が生存することすらできなくなることがシミュレートされている。
この本が書かれたのは、2005年。1990年台の半ばから地球は地殻変動期に入っており、巨大地震にともなってメタンハイドレードが海溝から噴出することもある。

誰も暗黙知では判りながら、今日を生きている。
ツケが全部未来の子供たちにまわされる。悲しい。

地球上の人口は、中国・インドの人口増加が2040年くらいで頭打ちとなり、85億くらいまでいく。
しかし、それまでに、これからの人類がどれだけ厳しい現実を生きていかなければならないか、想像を絶する。

この星で生きていくことができるかどうか、ギリギリのところまでいくだろう。

仕事も生活も、そして経済、政治に至るまで、すべてが大混乱の後、次のパラダイムの創造にかかっている。

世界の中で日本の存在とは。そして連携。

この数週間くらいの読書

知り合いから日頃何を読んでいるのか質問されたので、blogに書いておくと答えたので。

多ジャンルに渡っているのは、ひとつの専門では答えを出せない時代になっているため。

内田樹さん「日本辺境論」。辺境の地にある日本が、いかにハイブリッドな文化を創り上げ、世界の中で希有な国として可能性を持っているか、必読の書。内田さんは合気道の有段者で、師が中村天風に学んだ多田先生。多田先生の師は、合気道の創始者・植芝盛平で大本教の出口王仁三郎に師事している。官憲からの弾圧、施設破壊に対しても戦わずして道を開こうとした王仁三郎が残した平和を求める精神としての遺産は、日本の地下水脈の中で生きている。日本の武道が戦わずして勝つこと、そこに主眼を置いていることにも共感。

伊藤貫氏「自滅するアメリカ帝国」は、経済と政治の分野で同時に分析している。安保に対してもアメリカの白人人口が2030年には20%まで落ちることから、GDPの急減と、今までの覇権を維持できないため、安保が無効化するシミュレーションなど、必読。
アメリカには、一極覇権主義と多極主義の二面で勢力が均衡しているが、その紹介も詳しい。日本のマスコミは英米系の情報ピラミッドの底辺にあると喝破する北野幸伯氏の「プーチン」も世界を多面的に捉える上で欠かせない。世界は、今、アメリカVS中国・ロシアで動いている。今年の大統領選以降、アメリカは、BRICSを叩き落としにかかるであろう。アメリカは、今年の大統領選に併せて何が何でも株を上げる必要があり、QE3(金融緩和策)の発言を強めている。2012.08.29付

安達誠司氏「円高の正体」日銀の政策と円高の正体が判る必読書。プラザ合意から始まる円高が判る。良い円高など無い。白川総裁は、日本においては金融緩和の必要性と実施の現状を説くが、今春行ったアメリカでの講演では、その全く逆のタカ派的発言で円高容認を発言。何故か。この本を読んだ後に考えるテーマになるだろう。前回のG20で、ユーロ危機に対するアメリカの支出はゼロ。日本だけ5兆円の支出を行っている。何故か。ポール・クルーグマンは1990年代後半に速水総裁が行ったバブル後の引き締め政策を、明らかに間違いだったと分析するが、日銀のインフレ忌避が脈々と続いているのは何故か。リーマンショックの後、先進諸国はインフレだったが、日本のみデフレから抜け出せないのは何故か。このあたりが読書後のテーマになる。アメリカにとって日本は脅せば金が出てくる金の卵である。

松岡正剛氏「白川静」漢字はその成立の背景に何があったか。王、社会の原初の祈念や欲望があり、その膨大な解読をされた白川博士の研究を紹介。我が家には「字統」のみだったが、「字通」「字訓」も購入しなければ。白川博士が日本のために研究をされていたこと、理念を知る。戦後、GHQが行った漢字についての削除・統制がいかに日本の文化を阻害するか、はっきりする。何故、GHQはこのコントロールを行ったか。植民地支配の方法を考えれば判る。日本には、漢字、ひらがな、カタカナがハイブリッドで生き残る唯一の国。韓国は、戦後、漢字が姿を消しハングルのみとなり、フィリピンは英語が公用語になった。GHQの文化支配と戦った先達たちの気概を胸に刻もう。

マーク・ブキャナン「歴史はべき乗則」で動く」種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学。砂山に砂を降り積もらせると、突如砂山が崩壊する地点がある。べき乗則の事例を自然、社会、ネットワーク様々な事例で紹介。複雑系の科学は、30代前半に目から鱗が取れるほどの衝撃を受け、イリヤ・プリゴジン「混沌からの秩序」から私は始め、エリッヒ・ヤンツ、サンタフェ研究所のスチュアート・カウフマン「自己組織化と進化の論理」、スモールワールド理論など通過。現在では、複雑系という言葉はあまり使われず、各分野において研究が続けられている。プロセスと動きの中で考える習慣が身についた。地球規模の災害を認識するために読む。

井筒俊彦氏「読むと書く」エッセー集。知る人ぞ知る今は亡き井筒俊彦氏。詩人であり哲学者であり外交官でもあったフランスのポール・クローデルの詩的存在論を再読。詩人は行間にほとばしる魂、現れる存在がある。詩人はたった一つのことを伝えるためにこの世に生まれてきた、とはクローデルの言葉。哲学者でもあるクローデルの詩的存在論。一と多、個と全体を同時に語るディスクールは、井筒さんも詩人の魂を持つ所以。西田幾太郎、鈴木大拙との交流もあった方。西田哲学の「絶対矛盾的自己同一」は、日本人でなければできない世界認識であろう。アルファベット文化ではできないと思う。詩人は世界に対して「絶対矛盾的自己同一」を行っているとも言える。井筒さんの「意識と本質」〜精神的東洋を索めて〜は井筒さんの業績理解として必読。

月刊サイエンス 「ヒッグス粒子」あまりにも凄い発見らしいので、先ずは読む。科学者の方々が見せるチームワークが美しい。

その他
・西澤潤一さん、Isao Ueno共著「悪魔のサイクルへ挑む」
・ブライアン・フェイガン「歴史を変えた気候大変動」「水と人類の1万年史」「古代文明と気候大変動」。この1年ほど氷河期から人類の文明史を遡る研究が出てきているが、これくらい長いスパンで物事を捉えることの必要を感じていた。
・ポケット詩集 日本の詩人数十人の詩選集。
・茨木のり子詩集
・孫崎享著 「日本人のための戦略的思考入門」クライゼヴィッツの戦争論、孫子の兵法からゲーム理論に至り、失敗の本質を事例を含め紹介。クラウゼヴィッツは、天才ナポレオンとの戦いで敗戦を期し、戦争論を組み立て、その後のドイツの強さを築き上げたことで知られる。
・小室直樹著 「悪の民主主義」再読。今は亡き小室さん。良い仕事をしておられた。日本に対して危機感を持っている方は良い仕事をする。
・ウェード・アリソン著 「放射能と理性」震災後、アメリカ、中国など東京退去を勧めたが、英国は違う判断をした。英国の判断基準を学ぶ。放射能の基準値についての考察。これは別の機会に書くことになるだろう。
・辻邦夫著「背教者ユリアヌス」読書中。
・ハイデッガー「存在と時間」再読中。

「ロスジェネの逆襲」は面白い

池井戸潤さんの「ロスジェネの逆襲」を昨夜読了。
面白い。読後のスカッとするあの爽快感。
「下町ロケット」からファンになった。
今回はIT業界が舞台。
多分、池井戸さんって忠臣蔵を研究したんだろうなあ。
日本人の琴線に見事なまでに触れてくれる。
ストーリーも緻密で飽きさせない。

企業が行う社員教育はなかなか成果が上がらないことで知られるが
こういう企業エンタメ小説で、ふつふつと燃えるものが生まれるほうが
よっぽど教育効果があるだろうなあと思う。
勉強するにも情熱がないと、成果なんか上がらないだろう。

氷のように冷たく人間を道具にしてくる世の中で生きていくには
信念と情熱が無いと生きていけるもんではないだろう。