ポール・クルーグマンの読書備忘録

今週はポール・クルーグマンを読んでいた。
自分のための整理。
リーマンショックは、ロシアルーレットで例えれば、引き金を引いたとき、まさか実弾が入っているとは分からなかった、この比喩は秀逸だった。
2日後に気がついたため、AIGを国有化。

日本のデフレについては、1990年代の前半、速水総裁の政策ミスが指摘されている。

デフレ脱却してないところで金融の引き締めに入って逆効果。
その時に速水総裁のコメントは、インフレが危ない、というものだった。
しかしながら当時インフレの予兆をはっきりと確かめたものでは無く、ミスをしたくない保身と日銀の独立性からくる。
そして小出しにした政策を行った。アメリカはバーナンキ議長が90年代日本の研究を行っており、バブルがはじけた同時に一気に政策を打たないと効果がない、ということを研究結果として導き出していた。
2002年から始まる平成いざなぎ景気は、アメリカと中国への輸出に依存していた。
供給政策がその先に需要を導き出すだろうという竹中平蔵の政策に対して、ねじれた政策であると批判。
小泉の構造改革が短期的視野にしか立っていないことも批判。

アメリカについては、グリーンスパンをやり玉に挙げている。ブッシュ政権時代に行われた金融緩和が、バブルを生じさせていること。住宅バブルの危機的存在を知りながら、助長させるメッセージをグリーンスパンが発していた。次に共和党で、金融緩和に積極的だった議員を批判している。
あと2-3発、アイルランドのような危機があったら、恐慌になるとの予言。

もう一度日本についていえば、当時の与謝野大臣が、日本への影響は少ないとコメントしたが、まるで大本営の発表であることがわかる。
クルーグマンがアドバイスするのは、インフレターゲット4%の目標導入値、そして日銀法の改正。

ベースになっているのは、需要と仕事がないということ。
ITのような新しい技術が登場しない限り、次の資本主義の発展は難しいだろうということ。
これは言い換えれば、有史以来初めての状況つまりモノが行き渡ってしまったと言い換えてもいいだろう。

自己組織化する経済のなかでは、賃貸のネットワークについて書かれている。
つまり、相手を信用して経済規模が発展していく場合と、その逆の場合。
2007年8月に起こったサブプライムローン信用収縮が、インターバンクの市場(外国間銀行取引)で極度の信用収縮に陥り機能不全がヤバかった。
リーマンのときも同じ。複雑系で言う「べき乗則」が起こる。砂山に砂を積んでいってもどこかで砂山が突然崩れる。

世界で潤沢な資金供給が、必要とされるわけだが、「流動性の罠」つまり、資金供給をしてもデフレから脱却できない=恐慌の前兆が、いくつか見られる。
ただし落ちたとしも数年だろう、というメッセージ。これは分かる。インフラがあるから戻りも早い。

クルーグマンが語らないこととして。地球環境の災害が経済に及ぼす影響。それを乗り越えるための新しい産業と資本主義について考え続けているが、そういうコメントは無い。

暗黒大陸日本と未来

円高で82円台を付け、日銀介入で85円後半まで戻し、
その直後、アメリカからは、83円くらいが適切な価格であるとのコメント。
まるで生血を吸われる日本。

中国との関係は、小泉時代に逆戻りしようとしている。

民主党の代表戦が終わり、親米路線が明確に見えるや、出てきたアメリカ、中国の反応。

暗黒大陸化する日本の中で、そして、アノミー化する社会の中で、生命が蝕まれ犠牲になっていく。

人類は未だ急速に進む社会の複雑さに適応する生きたシステムを持っていない。

魂は暗黒を求めず、内面の豊かさから自由を希求し開かれた平和を作り出す。仕事でも家庭でも、もっともっと実際の現場で活かされてくる芽が出ないと、この国はダメになってしまうと痛切に感じる数日だった。

小室直樹さん ご逝去

小室直樹さんがお亡くなりになった。
謹んでご冥福をお祈りしたい。

私は直接教わったわけではないが、本棚のよく見えるところに小室さんの本は並んでいる。

10代の頃、TV番組で始めて小室さんを見た。
なんというか、学問を語る尊厳な雰囲気に対して
四畳半のアパート暮らしで、
エロ本をレポーターに見つけられても
正々堂々と自分の意見を語っていた。
凄い人だなあ、という印象を持った。

その後の田中角栄ロッキード事件では、TVで独り国際法を元に
論陣を張ったことで知られ、この不思議な小室さんの吸引力に引き寄せられて
自主ゼミ入りした学者の方も多い。

私は、そのTV番組を見ていない。

先週、友人に「日本教の社会学」(絶版)という山本七平さんとの対談本を貸して
話をしていた矢先だった。

そして、昨年、10代の男の子に英語を教えていたのだが、進学先の相談も受け、小室さんと橋爪さんがいる東工大の世界文明センターがいいのでは、と答えていた。

小室さんが、一番読んで欲しかった本は
「日本国民に告ぐ」~誇りなき国家は滅亡する~
だと思う。

立って仕事をしたり、散歩打ち合わせをすると

うちの事務所には、110センチの高さのテーブルがあり、そこで仕事をしたり打ち合わせをすることができる。
これは埼玉のキヤノン販売が打ち合わせを立って行っているという新聞記事を読んで実践したところ、大当たりだった。

この応用は、打ち合わせをする時に、散歩しながら打ち合わせをするというパターン。
歩きながら話をすると、なぜかどんどん前向きになってくる(笑)
これは本当だ。
脳の研究者で池谷祐二さんの本に「のうだま」がある。
やる気は脳の淡蒼球が動かないと、続かない。
この淡蒼球を働かすにはどうしたらいいか?という本で、漫画体裁になっていて、面白い。
やる気は続かないのが当たり前で、ではどうしたら続くの?という内容。

糸井重里さんとの対談本、「海馬-脳は疲れない」も面白かった。この本を応用して、あるライセンスを一ヶ月勉強で取得した。
勉強しても翌日には半分忘れるので、期間をあけて3回叩き込むと脳の記憶をつかさどる海馬に定着するという話。やってみたらホントだった。
今でもこれで勉強したことは覚えている。

池谷さんの「単純な脳、複雑な私」も面白い。脳はいかにいい加減で愛すべき奴かが分かってくる。

私たちは、体と脳のことを、あまりにも知らなさすぎたのかもしれない。

知ると、どう使うかが分かってくる。

会社の効率も、実はこういうところから入ったほうが、本当の効果が上がると思う。