円安とシェール革命

ドル円は、85−90円、90−95円というように5円幅のレンジで動くため、90.20円の石破レンジを上抜けしたため、95円をめざしている。
これで124円から落ちてきた円高の大きなトレンドが終わり、リーマンショックのような金融危機でも無い限り一旦円高は終了した。
目出度いことである。株高も円高終了を前提にしている。
2012年初春に75円が破られなかったため、長期の円高は本当はそこで終了しているのだが、阿部政権がリフレ派の浜田宏一さんをブレーンに起用してタイミング良く円安期待の流れに乗せた訳だ。
それまで円安の流れは、日銀の円高容認インフレファイターの体質と官僚主義、そして民主党の仙谷由人の30兆にも上るデフレギャップ容認と安住素人大臣のため、止められていた。白川さんは速水元日銀総裁の右腕を務めた経歴からも分かるように、90年代後半、バブル崩壊後、金融緩和に向かわなければならなかった過渡期に逆の引き締めを行った速水元総裁の日銀体質を受け継いでいたと思われ、90年代後半の日銀政策は、明らかにミス政策であったことは歴史的にも明らかだった。
エルピーダメモリが破綻したのも円高のため。日銀の白川さんには、市井の生活というものが分かっていなかったようだ。
しかし本当の円安は110円を越したところにある。昔100円を切って大騒ぎしていたのに比べれば、まだ91円である。2015年までアメリカの政策金利が据え置かれるため、まだ限界がある。

この通貨戦争で日本だけが犠牲になっていた。よく言われるように通信簿で1なのに5が付いたようなもので、特にリーマンショック以降、中央銀行がバランスシートを拡大させていたのに対して、日銀の逆を取った政策、そして与謝野薫、藤井裕久両大臣の円高肯定ポリシーが、日本の常識は世界の非常識となり、仙谷、安住が拍車をかけた。小沢一郎だけが5%のインフレターゲットを説いていた。
野田元首相がデフレ時代に消費増税をかかげ財務省の代弁を国策としたことは、記憶に新しい。景気回復の前に具の骨頂ともいえる政策を掲げることは、前後が逆になっている。

変動相場制のもとでは、金融危機の際は、金融政策が始めにあり、有効な財政政策との両輪で回すこと。
円安が進めば、相対関係を前提とする変動相場制の下では、日本が不況を輸出することになるため、韓国などは過度な円安に対して抗議してくるだろう。(どこの国でも自国通は輸出を考えると安い方が良い。白川総裁が何故欧米の中央銀行から評判が良かったかも分かる。つまり欧米が日本を輸出の対象国として見れば円高のほうが良いのだ。)特に韓国との関係では、6割の為替差が存在していたため、サムソンなどの半導体企業などに対しては(90年代後半に東芝のリストラされた半導体技術者200人を引っこ抜いて基板を作ったのがサムソンである)、いくらコスト削減を行っても日本企業は限界があった。

安倍政権がバラまき型の大きな政府をめざす限り、国債の金利上昇がつきまとい日本国債の暴落の危機が存在するが、逆を言えば、シカゴ大学の故フリードマンが説いたように小さな政府でコントロールする方法が存在する。しかしシカゴ大学でフリードマンの記念館を建てる話が出たが、フリードマンの理論は、恐慌の存在を否定しないため、大学内から異議が出て、頓挫したはず。ケインズへの回帰もリーマン直後起こったことも記憶に新しい。
そういう意味では、どちらの政策も完全ではないが、現況の中でベストを考えざるを得ないのが今の時代になっている。

日本人は何故円高になり、なぜこれだけ不況が長引いているのか、その真実を知らされることもなかっただけに(日銀の政策に異議を唱えるマスコミは情報疎外される)耐え続けたが、限界を超えてしまった訳だ。
市井の生活者を忘れた日、官僚、追従したマスコミ、そして政治家たちの罪を大きい。

本来、政治は二大政党制が健全であると考えるが、維新含め自民党の補完勢力になり、その兆しは薄い。
これはリーマンショックのように突如状況が一変する場合、政策転換できない危なさが存在する。犠牲になるのは国民になる。

さて、円安が仮に110円までいったとしよう。そのとき、原油高が及ぼす影響が出る。2007年にガソリンのリッター価格が180円を突破したことも記憶に新しい。石油価格が高騰すると消費が落ち、恐慌への要因となることが明らかである。
しかし、昨年に入ってから石油に変わるシェールガス革命が進行している。シェール層の岩盤を破砕してガスや石油を取り出す技術で、1キロワットあたりのコストが、石油10円、風力20円、太陽光35円に対し、シェールガスは6円となっている。採掘には日本の技術が利用されている。アメリカの埋蔵量は200〜300年とされる。

オバマ大統領がグリーンニューディール政策を口にしなくなったのもこのシェール革命のためである。シェール革命でアメリカでは300万人の雇用が生まれるという。凄い数字だ。日本では対アメリカへの工作機械の輸出が増大している。輸出先の比率逆転があり中国からアメリカへシフトした。いずれにしても新しい産業が生まれ雇用が促進されないと、金融政策と財政政策の両輪は難しい。日本は公共事業への支出を決めているが、さすがに馬鹿なばら巻きはやらないだろうから、高度経済成長期の構築され今ではガタがきているインフラ整備などに予算が使われるだろう。

ロシアは最大の天然ガスの輸出国でEUへの輸出でウクライナに圧力をかけた資源優位の地政学的戦略は難しくなり、一番大きいのは中東OPECが売り手として唯一の価格調整がができた優位も崩れるため、アメリカの中東政策は消極関与となり、イスラエルとの関係も変化する。
日本独自の資源は、海洋沖に存在するメタンハイドレードになるか。
地震による地層の分断でCO2が吹き出す危険もあるメタンハイドレートは、採掘調査が活発に行われている。

今後、資源採掘技術がもたらす技術が、経済、政治に与える影響は計り知れない。すべてがリンクしている情報空間とスピードの中で、或る位相が変化を起こすと、全体の構造を激変させる時代で私たちは生きている。