「シェア」 レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース著

シェアリングエコノミーが急拡大している背景がよく理解できる。ミレニアム世代という1980年以降の生まれで21世紀に成人した人たちが、どんな価値観を持っているかがよく理解できる。

ネットが当たり前の世代なので、つながりが密で
「コラボ消費は販売量だけを基準にした生産中心の経済指標から、現在と未来の人々の幸せを反映した多面的な価値の指標への移行と言うより大きな動きの表れでもある。」

この大きな流れに著者の二人は、1000を超える事例を調査して書き上げている。

物質的欲望を追求し続けても本当の満足はあるのだろうか?また次々と購入しては年に一度しか使わないモノはどうしたらいい?素朴な疑問を持ち始めた世代が、次々とネットでシェアリングサイトを立ち上げ、人との交流と交換を始めた。

なるほど!と思ったのが、人の孤立化と物質的欲望の増長がアメリカの金融危機を招いたという説。フランスのサルコジ元大統領がGDPの再定義を提案したことも紹介されている。そのときのアドバイザーがノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン博士とスティグリッツ博士だった。セン博士は現代経済学が数学的にも専門化した結果、隘路にはまり込み、その再生を考えるために、厚生経済の可能性について説いている。

世界はゆるやかなインフレでないと失業率も高くなる。そしてモノが売れないとデフレとなる、これは一面の真実だが、モノに対しての所有価値がこれから見直されていくのかもしれない。

シェアする、してもらうコミュニティにおいて、ほとんど事故は起こらずより豊かな人間関係が生まれていることを紹介しておきたい。

「シェア」 レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース著