「CHINA2049」から

CHINA2049」は、アメリカの中国専門家マイケル・ピルズベリー氏がアメリカの親中政策を失敗を含め分析した現在の中国研究においての必読書である。

過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年に当たる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する。本質は復讐であることが示されている。

その策略論が精緻に分析されており、弱いふりをして敵を油断させ力を蓄えた後、覇権を奪取する方法が分析されている。毛沢東時代、中国がソ連からの干渉を強く受け、対抗するパワーバランスを保つ上でアメリカのニクソン訪中を実現させ、それ以降アメリカからの技術供与、投資を呼び込み、密かに力を蓄えてきた。策略のルーツは春秋戦国時代に遡り、群雄割拠する諸国間で戦い抜く策略から学んでいる。中国が弱者のふりから強者の論理に舵を切ったのは、習近平時代になってからだが、リーマンショックで力を落としたアメリカに勝てると判断したことがターニングポイントになっている。当時は胡錦濤時代だがアメリカの緩和政策で中国は潤いこの段階においても未だ覇権奪取の素振りは見せていない。ハト派の仮面を被ったタカ派が本質である。強い中国という言葉を使い出したのは習近平時代からである。そして今では、アメリカが中国の策略に騙されたと気がついた訳だ。

 

中国を取り巻く政治と経済環境を見てみると、

今年に入ってからの中国GDPが実際にはマイナス15パーセントであると推測される。その根拠として、先進諸国から中国の輸出額は正確にだせるため、計算した数字がマイナス15パーセントである。(高橋洋一氏による)また、佐藤優氏によるとイスラム国がロシアの猛攻によって中央アジアに逃げ込むとき、ウィグル地区にも侵入する可能性があり中国は尖閣諸島、東南アジアの海洋域での覇権奪取どころではなくなると読んでいる。

 

AIIBでは中国の強権発動にドイツを始めとするEU諸国も及び腰になっている。中国国内の不満の鬱積、暴動は今年に入ってからも増大するばかりとなっている。北京市内でiPhoneが販売禁止となった事件は、国内の経済状況がかなり悪いことによるのだろう。笑える話だがアップルが中国のスマホメーカーのデザインを盗作したとしている。

 

佐藤優氏は中国とアメリカは金持ち同士喧嘩をしないと読んでいる。アメリカは自国のリソースを消費し続けざるをえない複合国家の弱みを持つため、残された女性リソースを利用してヒラリーが当選するだろう。AIIBで反逆の狼煙をあげた中国に対してマーケットの魅力を見いだすより、アメリカの軍需産業を守り武器を消費させるにはいつもやってきた10年に1度の戦争路線も充分考えられる。アメリカは10年に一度戦争をしないと国を維持できないからだ。

ヒラリーは、リビアのカダフィ暗殺を行いカダフィがいたから安定していた状況から混乱の坩堝にたたき落とし、怒ったリビア国民が駐リビアアメリカ大使を惨殺する事件にまで発展したことは記憶に新しい。

 

アメリカに目を向けると、

アメリカ大統領選の年は、ドル高がほとんどだったがFRBが金利をあげようとしても6月の雇用統計が6年ぶりの悪さで見送られ、イエレン議長は年二回の利上げ公約をアナウンスするが現実には無理であることをヘッジファンドに見透かされ、緩やかなドル安に向かっている。

そして日本のドル円も下がり続け円高圧力によって日経平均をさっぱり上がらない。

ジョージ・ソロスが85歳で現場に復帰したが、ベア(弱気)でのポジションを取るように指示し、金(ゴールド)の比率を上げるアドバイスをしたという。

 

あと数十年もすれば地球上からフロンティアがなくなり、どの国においても本格的な低金利低成長が到来するという水野和夫氏の分析通り動いているようだ。

 

どこの国も金利を上げようにも上げられないのだ。

 

さて、一度中国に話しを戻すと、

中国共産党は、15億人とも言われる人口のうち、数億人を切ることになっても構わないと考えているのだろう。

この100年マラソンが中国共産党のメルクマールであり、中国国民含めた話ではありえない。

多極化する世界の中で言うは易く行うは難しで、こうでも言わないと国内がまとまらない脆弱さの裏返しと考えても不思議はないだろう。

 

中国に限らないが、どこの国においても政治運営が極度に困難となっているのは、国民一人一人の個の欲求が多様化を通り越した個別化とでも言うべき超複雑なカオス状態に移行し、一人一人で構成される総体が力関係で逆転したことに依る。

 

来年からさらに厳しさが増す。何が起こっても不思議のないこの時代だけれど、新しい付加価値を作り出して明るく仕事をしよう。