シリアの状況について考える

FRBが緩和縮小に向かう宣言を出した6月、株は一気に下げ、為替は大荒れ、あまりの影響の大きさに再度、ハト派の傾向を盛り込み、のらりくらいの数ヶ月。
いずれ、緩和縮小に向かわざるを得ないため、それがいつなのか、どれだけの下げが来るのか、焦点を合わせようにも合わせられない数ヶ月。
EUはドイツ以外は強くないのと、フランスの格下げ話から分かるように、フランスの経済状況は決して良くないところで、シリアの話が出てきた。それにイギリスが乗った。
8月末の段階でイギリスは議会が通らず、アメリカも議会承認を得てからという手続きを踏むことになったが、オバマはブッシュの二の舞をするほど、馬鹿ではないだろうが、いかにだまくらかして兵器産業に金を回すか苦心惨憺しているのが透けて見える。
シリアの反政府軍は傭兵の集まりで、シリアの市民ではない。シーア派とスンニ派の対立から生じた中東の軋轢を外部が利用しているのだろう。シリア国民は誰もこんな内戦を望んでいないだろうし、シリアを舞台に戦争を引き起こすことで金儲けができる勢力にとって、今回はまたとないチャンスと見えたのだろう。アメリカ国民でもシリア参戦支持は、9%だという。
アメリカは世界的な戦争に持って行き、これまた日本からは、がっぽり戦争協力費を吸い上げる計画だろう。しかし、この金は、日本国民の税金から拠出されるという事実。
日本はアベノミクスで景気浮遊感が出ているが、世界はどちらかというと薄氷の上を歩く資本主義経済の状況であり、リーマン以降、緩和緩和のジャブジャブマネーで席巻せざるをえなかった有史以来初めての状況に対して、アメリカの緩和縮小=出口戦略がアンチとして飛び出したもんだから、新興国を中心にマネーの引き上げが予測され、次の時代での成長エンジン無き成長を演出せざるをえなかったので、青息吐息の株であり、経済であり、戦争で金もうけを、と軍需産業からの突き上げが背景にもあるのだろう。
世界中、誰がこんなことを望んでいるのか?
金は人間が作り出したものだが、金が人間を支配するようになったのはいつからか?
地球に人間が必要となっていない、そういう状況が来てはならないことくらい誰にも分かる。
田中宇ニュースで読んだ記事が参考になったので、以下で転載。
「無実のシリアを空爆する」
2013年8月28日   田中 宇
米国が英仏の賛同を得て、早ければ8月29日にシリアを空爆するという。首都ダマスカスの近郊で、8月21日に化学兵器によって市民が攻撃され多数の死者が出たとされる件について、米政府は「シリア政府軍の仕業に違いない」と断定し、国際的に違法な化学兵器の使用に対して制裁する目的で、シリア沖の地中海にいる米軍艦や、英軍の潜水艦から、トマホークなどのミサイルを発射して、シリア軍の基地などを破壊する予定と報じられている。攻撃対象が多くなる場合、B2ステルスなど、ミサイルより多くの爆弾を落とせる戦闘機を使う予定だという。 (Strike on Syria `As Early as Thursday’)
攻撃の時期については、9月1日以降との説もある。時期の早晩があるかもしれないが、米政府の高官がマスコミに攻撃を明言しており、言葉だけでなく、いずれ攻撃が行われる可能性が高い。攻撃は2日間行われる予定だ。世論調査では、米国民の9%しか、シリアに対する軍事攻撃を支持していない。 (Obama reportedly considering two-day strike on Syria)
取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確たる証拠を、米英仏は持っていない。8月21日に市民への化学兵器による攻撃が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当しているとの報告を受けたりしたことだ。 (After Syria chemical allegations, Obama considering limited military strike)
しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証明になっていない。証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指摘がある。 (Materials implicating Syrian govt in chemical attack prepared before incident – Russia) (News of chemical weapons attack in Syria published one day before massacre happened)
また、アップされた動画を見た英国の科学捜査の研究機関(Cranfield Forensic Institute)の専門家(Stephen Johnson)が、写っている被害者の容態が、化学兵器の被害を受けたにしてはおかしいと思われる点が複数あると指摘している。写っている負傷者は、身体に白い気泡(水ぶくれ?。foaming)ができているが、報じられているような化学兵器の攻撃を受けた場合、気泡はもっと黄色か赤っぽくなるはずで、白い気泡は別の種類の攻撃を受けた症状のように見えるなど、シリア軍が持っている化学兵器が攻撃に使用されたと結論づけるのは早すぎる。専門家はそのように指摘している。 (Expert casts doubt on Syria chemical weapons footage)
また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したような報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰が攻撃してきたかはわからない」と言っている。また、米国の金融界や大企業の献金を受けて活動している同医師団について、戦争で儲けたい米国の勢力の意向を代弁している疑いがあると見る向きもある。 (”Doctors” Behind Syrian Chemical Weapons Claims are Aiding Terrorists)
シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張する一方、反政府派や彼らを支持する米欧などは「政府軍が化学兵器を使った」と主張し、対立してきた。シリア政府軍は化学兵器を持っていることがわかっているが、反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。だがその後、シリアに隣接するトルコの当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。国連は、シリアに専門家の調査団を派遣することを決め、調査団は8月中旬にダマスカスに到着した。その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルから15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。 (Propaganda Overdrive Suggests Syria War Coming Soon) (悲劇から喜劇への米国の中東支配) (大戦争と和平の岐路に立つ中東) (シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?)
3月に化学兵器を使ったと疑われているアサド政権が、国連の調査団が到着した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。シリアの内戦は今年に入り、アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還している。しかも政府軍は空軍を持っており、化学兵器でなく通常兵器による空爆の方が、反政府派を効率的に駆逐できる。政府軍が、自分らが優勢な時に、非効率的な化学兵器を使うとは考えにくい。反政府派が、これまでも自分らに有利な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけてくれるとの見通しで(もしくは米国側から持ちかけられて)、国連調査団の目前で化学兵器を使ったと考える方が納得できる。 (US Sponsored Rebels in Syria have been Defeated. Government Forces are Restoring Peace throughout the Country)
事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」などと、競ってつり上げて報道した。 (Chemical weapons use in Damascus: ‘only a fool can believe it’ – expert) (`Chemical Weapons’ media propaganda in US, UK is designed to hide the truth in Syria)
事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわからない」と慎重姿勢だったが、マスコミはそんなのおかまいなしだった。03年の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じていたのとまったく同じ姿勢だ。イラク戦争の失敗後、米英マスコミは、戦争を起こすプロパガンダ機関になったことを反省し、姿勢をあらためたはずなのに、今回またシリアで、03年と同質の扇動が繰り返されている。 (U.S. says unable to conclusively determine chemical weapons used in Syria) (Remember bogus U.S. excuses for Iraq war before attacking Syria: China’s Xinhua)
FT紙はご丁寧にも「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転換する意図(米英によるおせっかい)で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を倒そうとするシリア人自身の活動を支援する(良い)ものだ。イラクとシリアはまったく意味が違う(イラクは悪い戦争で、シリアは良い戦争だ)」という趣旨の記事を載せている。 (Why Syria is not Iraq)
FTの記事は間違いだ。今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリア国民でない。他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカイダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。FTなどが妄想している「シリア市民の決起」とはまったく違う。シリアの一般の国民の多くは、長引く内戦にうんざりし、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えている。 (Media’s Reporting on Syria as Terrible as It Was on Iraq) (`None of insurgents were Syrian’) (シリア虐殺の嘘)
シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も明確に認めている。デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言している。マスコミの歪曲はひどい。「ジャーナリズム」の「あるべき姿」は、世界的に(もちろん日本でも)すでに消滅して久しい。今の(もしかすると昔から?)ジャーナリズムは全体として、読者や視聴者に間違った価値観を与え、人類に害悪を与える存在だ。(マスコミは昔から戦争宣伝機関の機能を持っていたが、近年までうまく運用され、悪さが露呈しにくかった。911後、宣伝機能が自滅的に過剰に発露されている) (Gen. Dempsey: Syrian Rebels Won’t Be US Allies If They Seize Power)
米政府はシリア空爆を決めた後、ケリー国務長官が「シリア政府軍が化学兵器を使ったことは否定しようがない」「それを疑う者は不道徳な陰謀論者だ」と表明し、根拠なしに政府軍犯人説を主張した。しかし他の諸国は、もっと慎重な姿勢だ。 (No Proof, But Kerry Insists Syria Allegations `Undeniable’) (John Kerry Delivers Obama’s War Declaration Against Syria)
フランスの外相は、シリア政府軍の拠点を空爆することを強く支持した。しかし、そこには「もし化学兵器を使ったのがシリア政府軍であるとしたら」という条件がついている。英国の態度も同様だ。イタリアは、国連で化学兵器の使用者が確定しない限り、空爆に参加しないと表明した。ドイツなどもこの線だ。 (`US unclear on Syria chemical arms use’) (Italy rules out action in Syria without UN)
今年3月に反政府派が化学兵器を使ったと指摘するロシアは「誰が化学兵器を使ったか確定するのが先だ」と言っている。決めつけを表明した米国以外は「もしシリア政府軍が化学兵器を使ったのなら、政府軍の基地を空爆すべきだ(もしくは空爆もやむを得ない)」と言っているが、マスコミは「もし」の部分を意図的に小さく報じ「空爆すべきだ、空爆はやむを得ない」と報じている。 (Syria crisis: Russia and China step up warning over strike)
シリアにはちょうど国連の化学兵器調査団がいる。彼らは当然ながら、8月21日の化学兵器使用現場を調査しようとした。しかし現地に向かう途中、反政府派から狙撃され、引き返さざるを得なかった。その後、日を変えて再び現場に向かい、2度目は現場を検証できた。だが、調査結果を持ってダマスカスから米欧に戻ることができないでいる。米国が国連事務総長らに圧力をかけ、調査団のシリアからの帰国を阻止している。この指摘は、米国の元大統領補佐官のポール・クレイグ・ロバーツが発したものだ。以前から彼の指摘は的確で、注目に値する。 (Syria: Another Western War Crime In The Making – Paul Craig Roberts)
対照的にFTは「シリアの独裁を倒すために立ち上がろう」と題する、昔の共産党機関誌顔負けの扇動的な題名の記事で「シリア政府が調査団の現地訪問を阻止している」と指摘している。当然ながら、信憑性に疑問がある。 (We must stand up to Syrian tyranny)
別の報道で「米英は、早く調査団を現地に訪問させろと言っているが、国連事務局が、治安の問題を理由に、訪問を先延ばしにしている」という指摘もある。これまた疑問だ。国連など国際機関の内部の議論を一般人が検証できないことを良いことに、誰が賛成して誰が反対しているかを逆に書くのは、昔から英国が得意とするプロパガンダ手法だ。 (U.N. Slowing Its Own Chemical Weapons Investigation In Syria)
現在の米政府の姿勢は「国連の調査団は来るのが遅すぎた。反政府勢力の証言から、シリア軍の犯行であるのは、すでに間違いない。いまさら調査しても意味がない」というものだ。ケリー米国務長官は「国連の調査は重要だが必須でない。すでに(政府軍が犯人だということで)結論が出ている」と言っている。 (Obama Administration Accepts Rebels’ Account on Syria, Prepares for War) (Obama considering limited military strike on Syria)
なぜ米国は、国連の調査を妨害するのか。もしケリーが断言するとおり化学兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行かせて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。それをせず逆に、調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害しているんだとマスコミに歪曲報道させている。真相は、化学兵器を使ったのが反政府勢力だということだろう。それが国際的に暴露されると、米英が支援してきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。 (Russia suggests Syria `chemical attack’ was `planned provocation’ by rebels) (Anti-Syria Western axis coming apart)
反政府勢力の犯行を隠すため、米国は国連調査団を帰国させず、彼らが帰ってくる前に空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅させ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、米軍の地上軍派遣をやらずに、アサド政権を倒すまで持っていきたいのだろう。ロイター通信も、そのような筋書きを報じている。米軍は、イラクやアフガンよりひどい占領の泥沼になるシリアへの地上軍侵攻に猛反対している。 (Reuters: US to Strike Syria Before UN Evidence Collected)
イラクとアフガンの失敗以来、米英などでは、政界や世論が、シリアやリビアなど中東の紛争地で戦争をすることに反対する傾向が増している。米英政府が、議会でシリアとの戦争の必要性についてきちんと議論すると、空爆ができなくなり、反政府派の悪事が国際的に暴露されていくのを看過せねばならなくなる。だから米英政府は、自国の議会が夏休みの間に、急いで空爆を実施しようとしている。本来、米国も英国も、戦争するには議会の承認が必要だ。 (War on Syria Imminent, US Won’t Seek UN or NATO Vote)
米国では911事件以来、大統領が「テロリストとの戦い」を開始する権限を持っている。だからオバマは合法的にシリアを空爆できる。しかし英国では、議会の決議を経ずに首相が勝手に戦争を開始できない。特に英国は、03年に米国のイラク侵攻につきあって大失敗して以来、開戦権について議会が厳しくなっている。あと一週間もしたら、英国は議会がシリア空爆を阻止する決議をして、米国と一緒にシリアを空爆できなくなる可能性が高い。だから、米国のオバマより英国のキャメロンの方が、シリア空爆を急いでいる。英国はこの10年ほど、米国に冷たくされ、何より大事だった英米同盟が希薄化している。シリアに濡れ衣をかけて空爆する悪事を米国と一緒にやれば、英米同盟を立て直せるかもしれないと、英政府は考えているのだろう。悪事を一緒にやった者同士は(悪事の悪さが大きいほど、強い)運命共同体だ。 (US, Britain and France Agree to Attack Syria Within Two Weeks)
米政府は、国内・国際的な反発を減らすため、空爆によってアサド政権を倒す目的でなく、使用禁止の大量破壊兵器である化学兵器を使った「罰」を与えるのが目的だとしている。だからアサドの大統領官邸やシリア政府の役所などは空爆対象にならないという。だが真の目的は、シリアが100機ほど持っている空軍の戦闘機を、空爆によってできるだけ多く破壊し、反政府軍に対するシリア軍の優勢を壊すことだろう。反政府軍は地上軍だけなので、空軍力がある政府軍に勝てない。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は地上軍どうしの戦いになり、政府軍の優位が減る。米英などは最近、シリアの南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻すことに力を入れている。 (Obama’s Syria options: From a symbolic strike to wiping out Assad’s air force) (Report Claims US, Israeli Trained Rebels Moving Toward Damascus)
今後、米英仏が本当にシリアを空爆するかどうか注目が必要だ。この戦争には、イランやイスラエル、ヒズボラ、サウジなど、他の勢力も関係している。今回は書ききれなかった、パレスチナ和平交渉との関係もある。それらは次回に、有料記事で書くつもりだ。

シリア空爆について
FRBが緩和縮小に向かう宣言を出した6月、株は一気に下げ、為替は大荒れ、あまりの影響の大きさに再度、ハト派の傾向を盛り込み、のらりくらいの数ヶ月。
いずれ、緩和縮小に向かわざるを得ないため、それがいつなのか、どれだけの下げが来るのか、焦点を合わせようにも合わせられない数ヶ月。
EUはドイツ以外は強くないのと、フランスの格下げ話から分かるように、フランスの経済状況は決して良くないところで、シリアの話が出てきた。それにイギリスが乗った。8月末の段階でイギリスは議会が通らず、アメリカも議会承認を得てからという手続きを踏むことになったが、オバマはブッシュの二の舞をするほど、馬鹿ではないだろうが、いかにだまくらかして兵器産業に金を回すか苦心惨憺しているのが透けて見える。
シリアの反政府軍は傭兵の集まりで、シリアの市民ではない。シーア派とスンニ派の対立から生じた中東の軋轢がルーツにあるのだろう。シリア国民は誰もこんな内戦を望んでいないだろうし、シリアを舞台に戦争を引き起こすことで金儲けができる勢力にとって、今回はまたとないチャンスと見えたのだろう。アメリカ国民でもシリア参戦支持は、9%だという。
アメリカは世界的な戦争に持って行き、これまた日本からは、がっぽり戦争協力費を吸い上げる計画だろう。しかし、この金は、日本国民の税金から拠出されるという事実。
日本はアベノミクスで景気浮遊感が出ているが、世界はどちらかというと薄氷の上を歩く資本主義経済の状況であり、リーマン以降、緩和緩和のジャブジャブマネーで席巻せざるをえなかった有史以来初めての状況に対して、アメリカの緩和縮小出口戦略がアンチとして飛び出したもんだから、新興国を中心にマネーの引き上げが予測され、次の時代での成長エンジン無き成長を演出せざるをえなかったので、青息吐息の株であり、経済であり、戦争で金もうけを、と軍需産業からの突き上げが背景にもあるのだろう。
世界中、誰がこんなことを望んでいるのか?
金は人間が作り出したものだが、金が人間を支配するようになったのはいつからか?
地球に人間が必要となっていない、そういう状況が来てはならないことくらい誰にも分かる。

田中宇ニュースで読んだ記事が参考になるので、以下で転載。http://tanakanews.com/130828syria.htm 無実のシリアを空爆する
2013年8月28日   田中 宇 米国が英仏の賛同を得て、早ければ8月29日にシリアを空爆するという。首都ダマスカスの近郊で、8月21日に化学兵器によって市民が攻撃され多数の死者が出たとされる件について、米政府は「シリア政府軍の仕業に違いない」と断定し、国際的に違法な化学兵器の使用に対して制裁する目的で、シリア沖の地中海にいる米軍艦や、英軍の潜水艦から、トマホークなどのミサイルを発射して、シリア軍の基地などを破壊する予定と報じられている。攻撃対象が多くなる場合、B2ステルスなど、ミサイルより多くの爆弾を落とせる戦闘機を使う予定だという。 (Strike on Syria `As Early as Thursday’)
攻撃の時期については、9月1日以降との説もある。時期の早晩があるかもしれないが、米政府の高官がマスコミに攻撃を明言しており、言葉だけでなく、いずれ攻撃が行われる可能性が高い。攻撃は2日間行われる予定だ。世論調査では、米国民の9%しか、シリアに対する軍事攻撃を支持していない。 (Obama reportedly considering two-day strike on Syria)
取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確たる証拠を、米英仏は持っていない。8月21日に市民への化学兵器による攻撃が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当しているとの報告を受けたりしたことだ。 (After Syria chemical allegations, Obama considering limited military strike)
しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証明になっていない。証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指摘がある。 (Materials implicating Syrian govt in chemical attack prepared before incident – Russia) (News of chemical weapons attack in Syria published one day before massacre happened)
また、アップされた動画を見た英国の科学捜査の研究機関(Cranfield Forensic Institute)の専門家(Stephen Johnson)が、写っている被害者の容態が、化学兵器の被害を受けたにしてはおかしいと思われる点が複数あると指摘している。写っている負傷者は、身体に白い気泡(水ぶくれ?。foaming)ができているが、報じられているような化学兵器の攻撃を受けた場合、気泡はもっと黄色か赤っぽくなるはずで、白い気泡は別の種類の攻撃を受けた症状のように見えるなど、シリア軍が持っている化学兵器が攻撃に使用されたと結論づけるのは早すぎる。専門家はそのように指摘している。 (Expert casts doubt on Syria chemical weapons footage)
また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したような報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰が攻撃してきたかはわからない」と言っている。また、米国の金融界や大企業の献金を受けて活動している同医師団について、戦争で儲けたい米国の勢力の意向を代弁している疑いがあると見る向きもある。 (”Doctors” Behind Syrian Chemical Weapons Claims are Aiding Terrorists)
シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張する一方、反政府派や彼らを支持する米欧などは「政府軍が化学兵器を使った」と主張し、対立してきた。シリア政府軍は化学兵器を持っていることがわかっているが、反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。だがその後、シリアに隣接するトルコの当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。国連は、シリアに専門家の調査団を派遣することを決め、調査団は8月中旬にダマスカスに到着した。その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルから15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。 (Propaganda Overdrive Suggests Syria War Coming Soon) (悲劇から喜劇への米国の中東支配) (大戦争と和平の岐路に立つ中東) (シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?)
3月に化学兵器を使ったと疑われているアサド政権が、国連の調査団が到着した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。シリアの内戦は今年に入り、アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還している。しかも政府軍は空軍を持っており、化学兵器でなく通常兵器による空爆の方が、反政府派を効率的に駆逐できる。政府軍が、自分らが優勢な時に、非効率的な化学兵器を使うとは考えにくい。反政府派が、これまでも自分らに有利な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけてくれるとの見通しで(もしくは米国側から持ちかけられて)、国連調査団の目前で化学兵器を使ったと考える方が納得できる。 (US Sponsored Rebels in Syria have been Defeated. Government Forces are Restoring Peace throughout the Country)
事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」などと、競ってつり上げて報道した。 (Chemical weapons use in Damascus: ‘only a fool can believe it’ – expert) (`Chemical Weapons’ media propaganda in US, UK is designed to hide the truth in Syria)
事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわからない」と慎重姿勢だったが、マスコミはそんなのおかまいなしだった。03年の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じていたのとまったく同じ姿勢だ。イラク戦争の失敗後、米英マスコミは、戦争を起こすプロパガンダ機関になったことを反省し、姿勢をあらためたはずなのに、今回またシリアで、03年と同質の扇動が繰り返されている。 (U.S. says unable to conclusively determine chemical weapons used in Syria) (Remember bogus U.S. excuses for Iraq war before attacking Syria: China’s Xinhua)
FT紙はご丁寧にも「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転換する意図(米英によるおせっかい)で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を倒そうとするシリア人自身の活動を支援する(良い)ものだ。イラクとシリアはまったく意味が違う(イラクは悪い戦争で、シリアは良い戦争だ)」という趣旨の記事を載せている。 (Why Syria is not Iraq)
FTの記事は間違いだ。今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリア国民でない。他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカイダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。FTなどが妄想している「シリア市民の決起」とはまったく違う。シリアの一般の国民の多くは、長引く内戦にうんざりし、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えている。 (Media’s Reporting on Syria as Terrible as It Was on Iraq) (`None of insurgents were Syrian’) (シリア虐殺の嘘)
シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も明確に認めている。デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言している。マスコミの歪曲はひどい。「ジャーナリズム」の「あるべき姿」は、世界的に(もちろん日本でも)すでに消滅して久しい。今の(もしかすると昔から?)ジャーナリズムは全体として、読者や視聴者に間違った価値観を与え、人類に害悪を与える存在だ。(マスコミは昔から戦争宣伝機関の機能を持っていたが、近年までうまく運用され、悪さが露呈しにくかった。911後、宣伝機能が自滅的に過剰に発露されている) (Gen. Dempsey: Syrian Rebels Won’t Be US Allies If They Seize Power)
米政府はシリア空爆を決めた後、ケリー国務長官が「シリア政府軍が化学兵器を使ったことは否定しようがない」「それを疑う者は不道徳な陰謀論者だ」と表明し、根拠なしに政府軍犯人説を主張した。しかし他の諸国は、もっと慎重な姿勢だ。 (No Proof, But Kerry Insists Syria Allegations `Undeniable’) (John Kerry Delivers Obama’s War Declaration Against Syria)
フランスの外相は、シリア政府軍の拠点を空爆することを強く支持した。しかし、そこには「もし化学兵器を使ったのがシリア政府軍であるとしたら」という条件がついている。英国の態度も同様だ。イタリアは、国連で化学兵器の使用者が確定しない限り、空爆に参加しないと表明した。ドイツなどもこの線だ。 (`US unclear on Syria chemical arms use’) (Italy rules out action in Syria without UN)
今年3月に反政府派が化学兵器を使ったと指摘するロシアは「誰が化学兵器を使ったか確定するのが先だ」と言っている。決めつけを表明した米国以外は「もしシリア政府軍が化学兵器を使ったのなら、政府軍の基地を空爆すべきだ(もしくは空爆もやむを得ない)」と言っているが、マスコミは「もし」の部分を意図的に小さく報じ「空爆すべきだ、空爆はやむを得ない」と報じている。 (Syria crisis: Russia and China step up warning over strike)
シリアにはちょうど国連の化学兵器調査団がいる。彼らは当然ながら、8月21日の化学兵器使用現場を調査しようとした。しかし現地に向かう途中、反政府派から狙撃され、引き返さざるを得なかった。その後、日を変えて再び現場に向かい、2度目は現場を検証できた。だが、調査結果を持ってダマスカスから米欧に戻ることができないでいる。米国が国連事務総長らに圧力をかけ、調査団のシリアからの帰国を阻止している。この指摘は、米国の元大統領補佐官のポール・クレイグ・ロバーツが発したものだ。以前から彼の指摘は的確で、注目に値する。 (Syria: Another Western War Crime In The Making – Paul Craig Roberts)
対照的にFTは「シリアの独裁を倒すために立ち上がろう」と題する、昔の共産党機関誌顔負けの扇動的な題名の記事で「シリア政府が調査団の現地訪問を阻止している」と指摘している。当然ながら、信憑性に疑問がある。 (We must stand up to Syrian tyranny)
別の報道で「米英は、早く調査団を現地に訪問させろと言っているが、国連事務局が、治安の問題を理由に、訪問を先延ばしにしている」という指摘もある。これまた疑問だ。国連など国際機関の内部の議論を一般人が検証できないことを良いことに、誰が賛成して誰が反対しているかを逆に書くのは、昔から英国が得意とするプロパガンダ手法だ。 (U.N. Slowing Its Own Chemical Weapons Investigation In Syria)
現在の米政府の姿勢は「国連の調査団は来るのが遅すぎた。反政府勢力の証言から、シリア軍の犯行であるのは、すでに間違いない。いまさら調査しても意味がない」というものだ。ケリー米国務長官は「国連の調査は重要だが必須でない。すでに(政府軍が犯人だということで)結論が出ている」と言っている。 (Obama Administration Accepts Rebels’ Account on Syria, Prepares for War) (Obama considering limited military strike on Syria)
なぜ米国は、国連の調査を妨害するのか。もしケリーが断言するとおり化学兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行かせて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。それをせず逆に、調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害しているんだとマスコミに歪曲報道させている。真相は、化学兵器を使ったのが反政府勢力だということだろう。それが国際的に暴露されると、米英が支援してきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。 (Russia suggests Syria `chemical attack’ was `planned provocation’ by rebels) (Anti-Syria Western axis coming apart)
反政府勢力の犯行を隠すため、米国は国連調査団を帰国させず、彼らが帰ってくる前に空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅させ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、米軍の地上軍派遣をやらずに、アサド政権を倒すまで持っていきたいのだろう。ロイター通信も、そのような筋書きを報じている。米軍は、イラクやアフガンよりひどい占領の泥沼になるシリアへの地上軍侵攻に猛反対している。 (Reuters: US to Strike Syria Before UN Evidence Collected)
イラクとアフガンの失敗以来、米英などでは、政界や世論が、シリアやリビアなど中東の紛争地で戦争をすることに反対する傾向が増している。米英政府が、議会でシリアとの戦争の必要性についてきちんと議論すると、空爆ができなくなり、反政府派の悪事が国際的に暴露されていくのを看過せねばならなくなる。だから米英政府は、自国の議会が夏休みの間に、急いで空爆を実施しようとしている。本来、米国も英国も、戦争するには議会の承認が必要だ。 (War on Syria Imminent, US Won’t Seek UN or NATO Vote)
米国では911事件以来、大統領が「テロリストとの戦い」を開始する権限を持っている。だからオバマは合法的にシリアを空爆できる。しかし英国では、議会の決議を経ずに首相が勝手に戦争を開始できない。特に英国は、03年に米国のイラク侵攻につきあって大失敗して以来、開戦権について議会が厳しくなっている。あと一週間もしたら、英国は議会がシリア空爆を阻止する決議をして、米国と一緒にシリアを空爆できなくなる可能性が高い。だから、米国のオバマより英国のキャメロンの方が、シリア空爆を急いでいる。英国はこの10年ほど、米国に冷たくされ、何より大事だった英米同盟が希薄化している。シリアに濡れ衣をかけて空爆する悪事を米国と一緒にやれば、英米同盟を立て直せるかもしれないと、英政府は考えているのだろう。悪事を一緒にやった者同士は(悪事の悪さが大きいほど、強い)運命共同体だ。 (US, Britain and France Agree to Attack Syria Within Two Weeks)
米政府は、国内・国際的な反発を減らすため、空爆によってアサド政権を倒す目的でなく、使用禁止の大量破壊兵器である化学兵器を使った「罰」を与えるのが目的だとしている。だからアサドの大統領官邸やシリア政府の役所などは空爆対象にならないという。だが真の目的は、シリアが100機ほど持っている空軍の戦闘機を、空爆によってできるだけ多く破壊し、反政府軍に対するシリア軍の優勢を壊すことだろう。反政府軍は地上軍だけなので、空軍力がある政府軍に勝てない。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は地上軍どうしの戦いになり、政府軍の優位が減る。米英などは最近、シリアの南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻すことに力を入れている。 (Obama’s Syria options: From a symbolic strike to wiping out Assad’s air force) (Report Claims US, Israeli Trained Rebels Moving Toward Damascus)
今後、米英仏が本当にシリアを空爆するかどうか注目が必要だ。この戦争には、イランやイスラエル、ヒズボラ、サウジなど、他の勢力も関係している。今回は書ききれなかった、パレスチナ和平交渉との関係もある。それらは次回に、有料記事で書くつもりだ。

転載終わり